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9話 少女たちの決断と、家族の誕生

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-26 06:00:39

 彼は塩の味、そしてその白い粒々とした形状を強く思い描く。口の中に広がるしょっぱさ、指で触れたときのザラザラとした感触まで、鮮明にイメージした。

 次の瞬間──

 テーブルの上にバサッと白い塊が出現した。それは紛れもない塩だった。触れるとひんやりと冷たく、指先で砕くとサラサラと心地よい音がする。

「よし! これでだいぶ食事が美味しくなる!」

 すぐに塩を保存するための箱もイメージして作り出し、塩を仕舞っておく。木製の小さな箱は、湿気から塩を守るため、蓋もしっかりと閉まるようにした。

(あとは……野菜がないな)

「明日にでも採集に行こうか……って、山には野菜はないか。あるとしたら山菜、山芋、サツマイモ、里芋……芋ばっかり思いつくな。久しぶりにジャガイモとか食べたいなぁ」

 元の世界で食べていたジャガイモのホクホクとした食感を思い出し、一瞬、懐かしさに浸る。この世界でも、いつかそんな食事ができるだろうか。

 すると、ステフが静かに口を開いた。その声は控えめながらも確かな意志を宿している。

「わたしが調理をしてスープを作ります」

 彼女の申し出に、そらは顔をほころばせる。

「ありがとう! 頼むね! ステフ」

 彼の言葉にステフが嬉しそうに頷き、恥ずかしそうに視線を逸らした。

 キッチンを作っておいて正解だった。これならもっと美味しいものができそうだ。必要そうな物の準備を済ませ、ふと周囲を見渡す。

 子供たちがカマドで料理を手伝ったり、薪拾いをしたり──それぞれが懸命に働く姿は、まるで小学校の自然教室のようだ。たった一日前までは見知らぬ同士だったのに、まるで家族のように自然に溶け込んでいる。

「こうして見ると、ちょっと微笑ましいな……」

 そんな中、料理に参加していなかったエルが外から戻ってきた。頬を紅潮させ、息を切らしている。

「山菜を採ってきたよっ! にひひぃ~♪」

 彼女の手には、いくつかの青々とした山菜が握られている。その明るい笑顔が、空間をパッと明るくした。

「助かるよ、エルありがとう!」

 そらは、自分はお風呂の準備をしておくことにした。せっかくだから、着替えも用意してあげようか……イメージで出せば問題ない。だが、ここで少し迷う。子供服を完璧にイメージできるだろうか? サイズ感や素材、デザイン。完璧なものを創造するには、かなりの集中力が必要だ。結局、無地のシンプルなものを用意することにした。

 そして、ふと考える。

(ベッドが、ひとつしかないな……)

 一人暮らしを想定して家を建てたので当然、部屋もひとつしかない。なのでベッドをもうひとつ置く余裕はない。まあ、みんな10歳だし、特に問題はないだろう。もし嫌そうなら、自分は床か外で寝ればいい。そんな選択肢を、当たり前のように受け入れている自分がいることに、そらは少し驚いた。元の世界では考えられなかったことだ。

 ──そうこうしているうちに、夕飯の時間になった。

 今日の夕食は、塩味のウサギの丸焼きに、鳥のスープ、そしてパンという素朴なメニューだった。だが、焼きたての肉からは香ばしい匂いが立ち上り、スープからは温かい湯気が立ち上る。素朴でありながらも、心を満たす温かさがあった。

 皆で食卓を囲むと、自然と笑顔がこぼれた。エルが、一切の屈託もない笑顔で言った。

「美味しいね!」

 飢えを満たすだけでなく、誰かと分かち合う喜びが、食事をより一層美味しくさせていた。

「明日から何する? やっぱり家に帰りたいよね?」

 彼は少し躊躇いながら尋ねた。すると、少女たちは顔を見合わせ、まるで示し合わせたかのように声を揃えて答えた。

「しばらく、お世話になりたいっ!」

 エルの明るい声に続いて、ステフが不安そうに上目遣いで尋ねる。

「わたしも良いですか……?」

 ブロッサムも優雅な仕草で深々と頭を下げた。

「わたしも、お願いしますわ!」

 彼女たちの返事に、そらは内心安堵した。広いこの家で、一人きりの生活に少しの寂しさを感じ始めていたからだ。この広大な異世界で、たった一人で生きていくことの漠然とした不安が、少しだけ薄れた気がした。

「じゃあ、明日は山菜採りと狩りだね!」

 その流れで、エルが興味津々といった様子で聞いてくる。そのキラキラした瞳は、まるで未知の冒険を期待する子どものようだ。

「そらくんは、ここに一人で住んでるの?」

 そらは少し考えた末、適当な嘘をついた。彼の中に、不用意に真実を話すことへの警戒心が芽生えていたからだ。

「父と住んでたんだけど、魔物に襲われたのか、帰ってこないんだよね」

 エルは申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「余計なこと聞いて、ごめんなさい……」

「大丈夫だよ、気にしないでね」

 場の雰囲気を変えるため、そらは話題を切り替えた。

「今日は疲れただろうから、お風呂に入っちゃいなよ」

 ──その瞬間、少女たちが揃って驚きに目を見開いた。その反応は、まるで目の前に幻を見たかのような、純粋な驚きだった。

「「「えっ!?」」」

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